穂香はすぐに光弘から視線を逸らせてしまった。


「どうして? 光弘って優しいじゃん」


「優しいけど、楽しくはなさそうだよ?」


眉を寄せて言う穂香にあたしは思わず笑ってしまった。


確かに、光弘はとても勉強熱心な生徒でこの高校にも主席で入学している。


休憩時間中も教科書と睨めっこをしていることが多かった。


「光弘と付き合えば勉強を教えてもらえるかもしれないのに」


「そういうのは大学受験を考えてからでいいの! 今は高校生活を満喫しないと損だよ!」


なにがどう損なのかわからなかったけれど、穂香の言いたいことの意味は理解できた。


とにかく今は遊びたいんだろう。


そんな話をしていると理香先生が教室へ入って来た。


同時にホームルーム開始のチャイムが鳴り始める。


理香先生はいつも時間ピッタリに教室へ入ってくるのだ。


「はいみんな、席についてー!」


その声を合図に、あたしは自分の席へと移動したのだった。