教室内は浮き足立った雰囲気のまま、放課後になっていた。


今日あたしは穂香と2人で掃除当番になっている。


教室からみんなが出た後、あたしたち2人はホウキを手にした。


廊下から貴久が「終わるまで待とうか?」と声をかけてくれたけれど、申し訳ないから先に帰ってもらった。


「理香先生、本当にどこに行ったんだろう……」


他の生徒たちと一緒に教室掃除をしながらも、穂香の思考回路は理香先生へと向かって行ってしまっている。


「大丈夫だよ穂香。理香先生はしっかり者だもん。きっと、理由があっていなくなったんだよ」


あたしは手を止めずに言う。


「そう思いたいけどさ、理香先生が無責任に授業を投げ出すなんて思えないもん」


それはあたしも同感だった。


しっかり者だからこそ、ちゃんと後処理をしてからいなくなりそうなものだった。


「そんな事ばかり考えて勉強がおろそかになったら、理香先生が戻ってきた時に怒られるよ?」


教室後方までゴミをはき終えて、チリトリでゴミ箱へと移動して行く。


「そうだね……」


穂香は呟くような返事をして、一杯になったゴミ箱を持ち上げたのだった。