「変って、なにが?」


「エマが急に泣き出したの」


「急に?」


お母さんがエマを見て眉を寄せる。


今はどう見ても普段通りのエマだった。


「そう。原因が全然わからなかったんだけど、河原から出たら泣き止んだんだよね」


あたしはそう言いながらエマの頬をツンッとつついた。


今ではすっかり涙は引っ込んでいるが、まだ目元が少しだけ赤い。


「エマ。河原になにかいたの?」


お母さんにそう聞かれても、エマはまた一心不乱にドーナッツを食べていて答えない。


夢中になるとすぐに周りの声が聞こえなくなるみたいだ。


それなのに、あの時は石積みをやめて泣いていた。


「まぁ、ケガとかじゃなければ大丈夫よ」


さすが、2人目を育てている親は肝が据わっている。


コーヒーを飲み終えたお母さんは楽観的にそう言い、カップを洗うためにキッチンへと向かったのだった。