@YUMI KO

あたしはエマの手を握りしめて歩き出そうとする。


しかし、エマはその場に氷ついてしまったかのように動かなかった。


「ほら、あそこ」


そして、指を指す。


誰もいない廃墟へ向けて『あそこ』と一言添えて……。


まだなにも見ていないのに、ゾワッと全身に鳥肌が立った。


見ちゃいけない!


本能的にそう感じ、恐怖から呼吸が浅くなっていく。


「エマ……あそこには誰もいないから……」


どうにかエマを説得して帰りたいのに、あたしの体も動かなくなってしまっていた。


ただ顔が、見たくない廃墟へ向けてゆっくりと動く。


まるで体が誰かに操られているような感覚だった。


嫌な汗が背中を流れて行き、今にも倒れてしまいそうだ。


それなのに……視線を向けた先に……。


いた。


いたのだ。


ソレが。