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自宅に戻ったあたしはエマと共に手を洗い、用意されていたドーナッツを手に取った。


リビングのソファの隣に座るエマはさっきまで泣いていたことなんて忘れてしまったかのように、砂糖がたっぷりかかったドーナッツにかぶりついている。


「川は冷たかった?」


コーヒーをひと口飲んで、お母さんがそう聞いて来た。


「うん。気持ち良かったよ」


返事をしながら、今日の妙な出来事を思い出す。


なにもないのにエマが突然泣き出すなんて珍しいことだった。


エマはカンシャクもなく、落ち着いた性格をしている子だ。


わけもなく大泣きしていたのは、赤ん坊の頃までだった。


「でもなんか、ちょっと変だったかな」


あたしは隣で口の周りを砂糖で真っ白にしながらドーナッツを食べるエマへ視線を向けて言った。