そして、貴久の足を思いっきり叩いたのだ。


「痛っ!」


いくら園児と言えど、力一杯叩かれれば痛い。


油断していたこともあり、貴久は顔をしかめて足をさすった。


「ちょっとエマ、なにしてるの!」


次から次に起こる出来事に混乱しそうになりながらも、あたしは必死にエマを止めた。


しかし次の瞬間……。


エマは大声で笑い出したのだ。


心の底からおかしそうに、そこら中に響き渡る声で。


「エマ……」


あたしは唖然としてエマを見つめる。


今までも興奮したエマが大笑いしたことはあった。


だけど今度は違う。


まるで、大人の女性のような笑い方なのだ。


エマはジッと貴久を見上げて笑う。


笑う、笑う、笑う、笑う、笑う……!


その声は、いつまでも消えることなく聞こえてきていたのだった。