地獄のような出来事が終ると同時に、周囲は静寂に包まれていた。


あたしはガタガタと体を震わせて光弘のお父さんが引きずり込まれた土の中を見つめる。


立ち上がる事すらできなかった。


「お父さん！」


やがて悲痛な叫び声を上げて光弘が床下に降りて来た。


そして素手で土を掘り返し始める。


「お父さん！　お父さん！」


由美子さんにとっては最悪な恋人でも、光弘にとってはただ１人の父親。


尊敬していたからこそ、光弘自身も熱心に勉強をしてきたのだろう。


「お父さん！　お父さん！」


泣きながら叫ぶ光弘の声はすでに枯れ始めている。


あたしはそっと自分の足に触れた。


瓦礫が乗ったままの足の痛みが徐々に蘇って来る。


どうにかしてここから出なきゃ……。


そう、思った時だった。


「ナナカ！！」