光弘が再び歩き出したのがわかった。


あたしはひたすら息を殺して音を聞く。


途端に、周囲が少しだけ明るくなった。


光弘が持って来たお母さんのスマホでライトをつけたみたいだ。


そして……つかの間に沈黙があった。


光弘はなにを見たのだろう。


光の中になにがあったんだろう。


気になり、そっと顔を出してみた。


光弘の後ろ姿が見えた。


光弘のお父さんが引きはがした床下をジッと見つめている。


「君は……」


その声にハッとして顔を向けると、光弘のお父さんと視線がぶつかった。


咄嗟に逃げようと身構えたが、あたしは動きを止めた。


ここで逃げたらなにも解決しない。


理香先生も穂香も貴久も、戻ってくることはない。


そう思うと、逃げることはできなかった。