しかし、中は壁すら崩れ落ちている廃墟だ。


隠れる場所はなかった。


「誰だ!?」


人の気配に気がついた光弘のお父さんが咄嗟にこちらへ振り向いた。


あたしと光弘は同時に身をかがめる。


光弘のお父さんがライトを持っていなかったのは幸いだったが、足音が徐々にこちら
へ近づいてくる。


どうしよう。


このままじゃバレてしまう……!


その時だった。


隣でしゃがみ込んでいた光弘が勢いよく立ち上がったのだ。


「光弘!? お前、どうしてここに?」


「ごめんお父さん。気になってついて来ちゃったんだ」


光弘はそう言い、自分のお父さんへと近づいて行く。


「来るな!」


途端に怒鳴り声が聞こえてきて、あたしはビクリと身を跳ねさせた。


「そこになにがあるだよ」


「なにもない! 帰れ!」


「嘘だ。そんなに慌てて、何を隠してるんだよ」