ゴトリと、重たい物が移動させられたような音がしてあたしは足を止めていた。


音がした方へライトを向ける。


そこに浮かび上がってきたのは、廃墟だった。


貴久が引きずりこまれて言った廃墟に、2つの人影が見えてあたしは息を飲んだ。


早足に近づいて行くと、廃墟を外から見ている光弘の姿に気が付いた。


「光弘」


そう声をかけると、振り向いた光弘が唇の前で人差し指を立てて「シッ!」と制した。


そして、テジェスチャーでスマホのライトを消すように促された。


あたしは光弘の言う通りにライトを消し、周囲は薄暗闇に包まれた。


「どうしたの?」


小声で聞くと、光弘は視線を廃墟へと移動させた。


廃墟の中は暗く、目をこらさないとよく見えない。


しかしその闇の中に蠢く、更に深い闇の色を発見した。