由美子さんが探していたのは物ではなくて、人。


そしてそれは、光弘のお父さんだったとしたら?


由美子さんは当初の目的の1つを果たしたことになる。


すぐに光弘に連絡を入れようと思ったが、光弘はスマホが使えない状態にあることを思い出した。


あたしは大きく息を吐きだし、そして舌打ちをした。


どんな状況でも、スマホが使えないのは不便すぎる。


確かクラスで配られた連絡票があるはずだと思い出し、あたしは机の引き出しを開けた。


互いに家の電話に連絡を入れることなんて滅多にないから、どこにしまったのかわからない。


教科書やノート、参考書をどんどん机の上に出していくが、1枚のプリント用紙はどうしても見つけられない。


もしかして両親が保管しているのだろうか?


学校の連絡網は両親が回してくれる時もあるから、その可能性も高かった。


「ナナカ、河名君から電話よ!」


お母さんのそんな声が聞こえてきてあたしは弾かれたように部屋を出た。


転げるように階段を下りてリビングのドアを開けると、電話の受話器を持ったままの状態でお母さんが待ってくれていた。