「いい? 今日は大人しくしててね?」


一度自宅に戻ってエマをお母さんに預けることにしたあたしは、自宅の玄関先でそう言った。


「はぁい」


エマは大好きな絵本を借りれたことが嬉しいようで、終始ご機嫌だ。


「じゃ、あたしはまた出かけてくるから」


「ナナカ、1人で大丈夫なの? 穂香ちゃんや貴久君のことがあったのに」


玄関先に出て来たお母さんがエマの手を握りしめて、不安そうな顔をあたしへ向けている。


「……大丈夫だよ」


確証はどこにもなかった。


でも、あたしが動かないといけない。


由美子さんがあたしを連れて行こうとしないのは、きっと伝えたいことがあるからだ。


「じゃ、行ってきます」


あたしはエマの頭をクシュッと撫でて、光弘の家へと向かったのだった。