「貴久!!」


「離せ! 離せよ!」


貴久は必死でもがいているが、両腕もろとも絡み付かれているので振り払う事ができない。


「やめて! 貴久を離して!」


あたしは元来た場所へと急ぐ。


歩くたびに足元の瓦礫が音を立てて崩れて、あちこちをすりむいた。


それでも痛みを感じる暇もなく立ち上がり貴久に手を伸ばす。


貴久に絡み付いている腕はズルッズルッと音を立てて瓦礫の中へ戻って行っている。


このままじゃ貴久は……!


「なにが目的でこんなことをするの!?」


手の届かないあたしは必死に叫んだ。


貴久の体は徐々に引きずれ、瓦礫の隙間へと入り込んでいく。


「やめろ……!」


青ざめた貴久はもう悲鳴も上げる事ができず、ただ小刻みに震えて小さな声で抵抗するはかり。


瓦礫の隙間はとても狭く人が入れるようなスペースはなかった。次の瞬間、バキッ!
と、大きな音が響き渡っていた。