エマの笑い声はこだまし、幾重にもなって入り込んでくるようだった。


「もう遅い」


やがてエマはそう言い残してあたしたちに背を向けた。


「ちょっと待ってエマ!」


エマ1人で帰らせるわけにはいかない。


だいたい、道がわからないはずだ。


エマを追いかけようとすればするほど、足元の瓦礫が邪魔をして思うように動けなかった。


まるで蟻地獄に落とされた蟻になった気分だ。


エマの背中はどんどん遠ざかって行くのに、あたしはまだ廃墟から出ることもできない。


「ギャアアアア!」


必死にエマを追いかけていたとき、後方から聞いたことのない悲鳴が上がっていた。


あたしは勢いよく振り返る。


そこには瓦礫から伸びる細い腕があった。


病的に白い腕はツタのように伸びて貴久の胴体に絡み付いている。