夜になったとき、貴久のお母さんは同じ部屋に布団を用意してくれていた。


「貴久、女の子なんだから変なことするんじゃないよ」


「なんだよ変なことって、なにもしないよ」


部屋を出て行くときに釘を刺され貴久はしかめっ面をしてそう答えていた。


こんな状況じゃなければもっと楽しめたかもしれないのに。


そう考えると悔しかった。


始めて貴久の家に止まった理由が、スマホの呪いだなんて……。


「そろそろ電気を消すぞ」


「あ、うん」


気が付けば夜の11時を過ぎていた。


貴久の両親はとても優しく暖かな人で、あっという間にこんな時間になっていたみたいだ。


電気を消すと暗闇が部屋の中に立ち込める。


あたしの隣の布団に入り込む音が聞こえて来た。


「眠れそうか?」


「わかんない」


あたしは正直に答えた。