そうしてたどり着いたのは貴久の家だった。


久しぶりに訪れた家に、今更ながら緊張してきた。


2階建ての大きな家は庭も大きくて、その中を愛犬が走り回っている。


「どうぞ」


貴久に促されて家に入ると、すぐに貴久のお母さんが出迎えてくれた。


お泊りということで、さすがに前もって連絡しておいたのだ。


「いらっしゃいナナカちゃん」


人の良さそうな笑顔で出迎えてくれると、少しだけ緊張がほぐれた。


「こんにちは。お邪魔します」


ぎくしゃくと挨拶をして家に上がる。


その人の家どくとくの家庭的な臭いがした。


「俺たち2階にいるから、なんかあったら呼んで」


貴久はそう言い、すぐに階段を上がり始める。


お父さんはまだ帰ってきていないようだ。


「はいはい」


貴久のお母さんは嬉しそうに返事をして、リビングへと戻って行ったのだった。