家の前まで移動してきた時、あたしは大きく深呼吸をした。


家の中からはエマの笑い声が聞こえ漏れてきていて、今はとてもご機嫌だということがわかった。


玄関を開け、「ただいま」と、リビングにいるお母さんへ声をかける。


「おかえり~」


エマと遊んでいて手が離せないのか、声だけが帰って来た。


「おじゃまします」


貴久がリビングまで聞こえる声でそう言ったので、ようやくお母さんが出て来た。


「あら、貴久君!」


「こんにちは。お邪魔しても大丈夫ですか?」


「もちろんよ。ナナカの部屋は散らかってるかもしれないけどね」


お母さんはそう言い、あたしへ向けて笑って見せた。


「エマはなにしてるの?」


あたしはお母さんの言葉を無視して玄関を上がった。


「なにって、いい子に遊んでるわよ?」


「エマちゃんにも顔を出してきますね」


貴久はそう言って、あたしの後を追い掛けてリビングへ向かう。