河原から道路へ移動して、廃墟へと歩いて行く。


「ひどいな、今にも崩れそうだ」


近づいてみると、廃墟はいつ倒壊してもおかしくないくらい崩れていて、貴久が顔をしかめた。


「本当だ」


あたしは廃墟の手前で立ちどまってそれを見上げた。


灰色の建物が青い空に吸い込まれて行きそうに見えた。


「こんな場所には誰もいないよね……」


だけど、確かにエマは誰かを見て指さし、そして怯えていたように見えた。


「最近のエマちゃんの様子も、おかしいままなんだよな?」


「うん。ずっとってわけじゃないけどね……」


なにがきっかけであんな笑い声を上げたり、乱暴な言葉を使うのかわからない。


「ちょっと、エマちゃんに合わせてくれないかな?」


「いいけど……」


あたしはそこまで言って貴久へ視線を向けた。


貴久は1度エマに会った時、足を蹴られているのだ。


もしかしたら今回も同じようなことになるかもしれない。