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今日の河原もとても穏やかな流れだった。


透明度の高い水の中には小魚の姿が見えている。


私立図書館から歩いて10分ほど歩いた河原で貴久は立ち止まった。


「ここか……」


「うん。この辺じゃ一番大きな川だよね」


あたしはそう言って河原を歩き出した。


今日は天気がいいからか、少し離れた場所には数人の釣り人の姿が見えた。


けれど、今あたしたちがいる場所には誰もいない。


川の中には魚が見えているのに、どうしてだろう?


疑問に感じた時、視界の中にあの廃墟が見えた。


夢の中にも現れた薄気味悪いアパートだ。


立ちどまってそちらへ視線を向ける。


「どうした?」


「エマは、あの廃墟の辺りを指さしてたの」


あたしの言葉に貴久が先に立って歩き出した。


あたしは慌ててその後を追い掛ける。