@YUMI KO

☆☆☆

穂香がいなくなった経緯を何度説明しても、誰も信じてくれなかった。


あたしは確かにこの目で見たし、穂香が連れていかれないようにあの腕を殴りつけた。


それは事実だったのに、穂香は自分から失踪したことになってしまった。


あたしの家に泊まりに来た穂香は、普段からなんらかの悩みを抱えていたため、両親がいない今を見計らって家出をしたと……。


それは違うと訴えたが、やはり誰にも聞いてもらえなかった。


人間1人がスマホの中に取り込まれた。


そんな話、警察が信用するはずもなかった。


なによりも、スマホの着信音や穂香の悲鳴を聞いていたのがあたし1人だったという事実があった。


あれだけ騒いでいたのに、両親はなにも気が付かなかったのだ。


警察が帰ったとき、あたしは茫然とリビングに立ち尽くしていた。


警察が来ても動じず、リビングの床でずっと1人遊びをしていたエマに視線を送る。


「エマ……」


声をかけても、エマは塗り絵に夢中で気が付かない。


「エマ、教えて。なにが起こったの?」


近づいてそう聞くと、エマはやっと顔を上げた。


そして……笑う。