細い腕は想像以上の力で穂香の体を引きずって行く。


「やめて! 穂香を離して!」


本棚に走り、辞書を持ってその腕に叩きつけた。


しかし、腕は穂香をのことをキツク掴んで離さない。


捕まれている穂香の腕からは血が滲んできていた。


「痛い痛い痛い痛い!」


穂香が涙と苦痛で顔を歪ませる。


「離せ! 穂香を離せ!」


あたしは何度も何度も腕を殴りつけた。


それでもびくともしない。


「あ……ああああ……!」


穂香が口を大きく開いて自分の腕を見つめる。


その瞬間、強く掴まれていた腕がバキバキバキ! と音を立てて、妙な方向へ折れ曲がった。


悲鳴が喉の奥に張り付いて出てこなかった。


穂香が体の力を失い、勢いよく引きずられた。