目の奥に

光を感じ、

そっと目を開けた。










なんだ、、、







「、、、夢、、だったんだ、、。」









柊さんと出会ってからはじめてこんな夢をみた。


、、、私の願望が強くなっているのかな。








朝6時半、
起き上がり、布団を整えて
窓を開けた。





窓をとおる冷たい風を感じながら
思い出す。






出会った頃を。









柊さんと出会ったのはもう10年以上も前の話。







その頃20歳だった私にとって

35歳の柊さんの第一印象はこわい人だった。








彼はとても優しくて

傷つきやすくて

大人な部分もあれば

子供のような所もあるのだと

気づいたのは

つきあってからの話。




、、、ううん、ちがう。





つきあってからも私はすぐには気づけなかった。

彼の痛みや苦しみに。

私が大人になれなかった。







出会ってすぐのあの頃の私が

つきあってからの私が

もう少し大人でいたら

なにか今変わっていたのかもしれない。








【at the age of 20】








20歳の春に都心の専門学校を卒業した私は、

就職活動がうまくいかず、

同じ頃につきあっていた彼氏とも別れ、

軽い鬱のようになり、

卒業と同時に1人暮らしをやめ、

実家に帰ってきていた。













、、実家に帰ってきてから2週間。






毎日だらだらとすごしていた私に両親は



アルバイトでもしなさいと言って、

事務の仕事の募集情報をもってきた。





私は渋々履歴書をかき、提出した。







働かなければと思っていはいたが、

どうしてもあの事を思いだすと

不安でいっぱいになる。










私が

なりたかった仕事は

インテリア関係の仕事。







私が夢を諦めた理由は、

就職活動前、

学校からのインターシップがきっかけだった。







あるインテリア関係の会社に1週間、

もちろんタダ働きで行くことになった。






初日、遅刻しないように30分前につき、


私は夢にみていた仕事に目を輝かせていた。




そんな期待していた私の行動とは裏腹に、




始業時間になっても社員はこなかった。

それから30分ほどたつと、

やっと事務員らしき女性が現れた。








「おはようございます!

今日から1週間よろしくお願いします!」



「あー、ごめんね!遅れてー」



その女性は長い髪をみだらにして現れた。

いかにも慌てて家をでてきたようにみえる。





その後、社長が出社。





10分ごとくらいに社員数名が出社した。










この会社では遅刻が習慣的になっていたのだ。





社長も遅刻していることから

誰も責めず普通にみんな仕事をしはじめている。









その様子を見ていた私の中で不安が生まれた。









掃除を終えたあと、




「とりあえずパソコンで

早く入力する練習をしようか。」





本を渡されながらそう言われ、


本の文書をパソコンへ入力する練習をずっとしていた。






中学生の頃から遊び半分で

パソコンをしていたので、

入力は早い方だった。







一日中、入力し続けたが作成したデータを

誰も見ることはなかった。






周りをみると、


社長はコーヒーを飲みながら新聞をみていた。





社長はインテリア会社を立ち上げたが、

自身はなにも知識がないらしい。





そのことを聞いたのは昼過ぎに

社長につれられて外出したときだ。


営業周りらしいが、

営業のようにはみえなかった。




書類など一切もたずに

ブラブラと車で移動しただけで、


車内でずっと二人きりで苦痛でしかなかった。





インテリアのことを学びたいのに

社長との話はインテリア関係のことは

なにも話さなかった。







一日で出社するのがとても嫌になっていった。







2日目、、、、今日も誰もきていない。






「あー、ごめんね!今日はちょっと早く来たでしょ?」






「、、、おはようございます」








毎日ひたすら、文書入力をしていた。

たまに社長との外出。










その合間に周りをみていると、





社長のパワハラやセクハラが普通にあり、

社員のやる気のない仕事ぶりをみて








20歳になったばかりの

仕事未経験の私は落胆した。




働くということはこういうことなんだと。

会社というものはこんな所なんだと

トラウマになっていたのかもしれない。






それ以来、


私には夢を追いかけることが

できなくなってしまった。





インテリアのことを考えながら

勉強していると

楽しくてしょうがなかったのに。






就職活動も勉強も

その会社のことを思い出すと、





働きたくないと言う気持ちがでてしまい

何もすることができなくなってしまっていた。












そんな経験から不安いっぱいで

履歴書を出した。







すぐに先方から面接をしたいという電話があり、

翌日に軽い面接を受けると

次の日から来てくれと言われ、

私はパートで働くことになった。








面接をした時に、

前のインターシップでの会社とは

あきらかに色んなことがちがっていることに

きづいた。






みんなスーツをきこなしており、



時折笑顔をみせながら

熱心に仕事に取り組んでいる。




仕事をみんなが楽しんでいるようにみえた。






みんなが笑顔で挨拶してくれて、


私の中で仕事に対するイメージが


変わっていくのを感じた。













この会社は建築関係の仕事で、


インテリアのことも少したずさわっている。




最初はコピーとりやデータ作成、

書類整理など

雑用を任せられた。




雑用でも嬉しかった。


それは意味のある仕事だったから。





データを作成しても削除されるだけの

インターシップでの時とはちがって

それは誰かの役にたつ仕事だったから。








色んな人が初日からとても優しく教えてくれた。








今思えば、

色んなことに甘えていただけだった。





働くということは辛いことは

当たり前のように沢山ある。

思い通りにいかないこともある。

すぐあきらめてしまった自分が情けない。







セクハラやパワハラは

もちろんよくないことだけれど、

だけど、うまく交わすこともできたはず。



考え方を変えれば

うまくいったかもしれない。





私はあきらめるのが早かった。












今そう思えるのは

彼がいたから気づくことが

出来たのかもしれない。


彼の仕事に対する思いが

私を変えていったように感じる。











彼は私のなにもかも見透かしてるように見えた。








私のずるい部分も。