あの日以来、私が流す涙の理由は“哀しい”、“辛い”、“悔しい”だけだった。


だから・・あの日以来初めて・・
“嬉しい”感情が目から溢れてきた。



「あ!もうこんな時間・・。
じゃあ俺もう行くね。」


「あの大川さん・・。」


「うん?」


「ご迷惑じゃなかったら近くまで乗せていってくれませんか?」


「え・・今から出掛けるの?」


「どうしても・・この街を出る前にご挨拶しておきたい人がいて・・。」


「でもこんな時間だけど・・
相手の人、大丈夫なの?」


「きっと・・居てくれると思います。」


「・・分かった。じゃあ行こうか。」





もしかしたら開いていないかもしれない。

いきなり行ってご迷惑かもしれない。


でも・・・扉は開くような気がする。


穏やかな視線を私に向けてくれて、

優しさに包まれた声で『元気でね・・エミカ・・』って言ってくれるような気がする。