桜井エミカ

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「よしっ・・これが最後の一箱だね。」


「大川さん本当にありがとうございました。」


積み上げられた段ボールの山。

ガムテープを貼って、最後の梱包が終わる。


「明日トラック来るのって9時?」


「はい。あのでも・・」


「いいんだよ。俺が手伝いたいから。」


「ありがとうございます・・。」






明日・・。

この家を・・この街を出る事に決めた。


“傷は癒えた”と言えば嘘になる。

でも・・“生きていく”と決めた私の両手には確かに・・


「それは段ボールに入れておかなくて大丈夫なの?」


「いつも鞄に入れて持ち歩いてるんです。

これは・・私を守ってくれる“剣”だから・・。」


「そっか。また向こうでの生活が落ち着いたら連絡してよ。」


「はい。手紙書きますね。」



「・・・・・・・・。」


「・・・・?」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・大川さん・・?」


「エミカちゃんあの・・こんな事を言うのは自分勝手だって分かってるんだけど・・。」


「・・・?」


「俺・・いつまでも待ってるから。

“心の底から”はもう無理かもしれない。

でも・・ちょっとした感情でもいいから・・また笑ってくれる日が来るのを・・。」


「・・・・・・・・・。」


「また帰ってきてくれるのを・・
俺はこの街でずっと待ってる。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・。」



「こんな加齢臭漂う小汚いおっさんだけどさ・・。」


「・・・・スッ・・・・・・・。」


「いつか・・一緒に暮らそう。」


「・・・・・・・・はい・・。」