ようやく本が変わったか・・。

確か・・前は、乾くるみのイニシエーションラブだったかな。


あんまり本を読まないから物差しがよく分かんないけど、そんな俺でも分かる。

マキさんが本を読むスピードは・・異常に遅い。


1ページ1ページ。

1文字1文字を噛み締めながら読むらしく、今手に持ってるあの本もいつ読破することやら・・。



「せっかくだから何か飲んでく・・?」


「じゃあ水道水で。」


「・・遠慮しなくてもいいのよ・・。」


「“恩人”の手を患わせるわけにはいきません。」


「・・・・・・・・・・・・・。」



「マキさん。今日で10年経ちました。」


「・・・・・・早いものね・・。」


「“風”とマキさんが俺を救ってくれたあの日・・。

父ちゃん、母ちゃん、妹・・

俺の“幸せ”を奪ったアイツを殺そうと・・

まだガキだったけど、差し違える覚悟で出刃包丁持って突っ込もうとした俺の前に、

マキさんが立ち塞がったあの時・・

“風”がアイツを窒息死させたあの日から今日で10年です。」


「・・・・・・・・・・・・・・・。」