サスケ

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“今夜23時、行きます”


ここの扉を開けるのは、
何年ぶりだろうな・・。




“カラン カラン”



「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・。」


「マキさん。来ましたよ。」


相変わらず・・
開いて鈴が鳴った扉なんて気にも留めず、

手に持っている本から視線を外さない。



「・・久し振りね・・
・・サスケちゃん・・。」


「ご無沙汰してます。」


「・・直接ここに乗り込んでくるなんて・・賃上げ交渉・・?」


「勘弁してくださいよ。

なんなら賃下げしてくれてもいいぐらい貰ってるっていうのに。」



連絡手段はメールか電話。

そこに一切の私語は無くて、
交わす会話は必要最低限の“情報”。


履歴はすぐに削除して、

証拠となるような文言は一切残さず行われる俺とマキさんのやり取り。


だからこうして面と向かって会うのは数年ぶりだっていうのに・・


「今度は何読んでるんですか?」


「・・今は・・伊坂幸太郎の・・
アイネクライネナハトムジークを・・。」