「一人で帰れる?」


「・・はい・・大丈夫です・・。」


「寄り道する気はある?」


「え・・・・・。」


「ちょっと待ってね。今・・22時45分。
・・うん、まだ間に合うな。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「君、名前は?」


「・・・志村・・ユキ・・。」


「じゃあ志村さん。ハンカチ貸してあげたお返しに、俺のお願い聞いてくれるかな?」


「・・・・ナンパ・・ですか・・?」


「ハハッまぁそんな感じ。実は俺が足繁く通ってるカフェがあるんだけど、

“ポイント溜めてオリジナル商品ゲットしよ~!”の期限が今日までなんだよね。

悪いけど、これ俺の代わりに取りに行ってくれない?」



「・・・・・・・・・・・。」



「・・・・あ、ダメ?」


「・・ここ・・知ってます・・。」


「え?もしかして行ったことある?」


「はい・・。入り口に花が飾ってあるオシャレな・・。」


「じゃあ場所は大丈夫だね。・・あ、こっちが俺が働いてる居酒屋の名刺ね。

取りに行ったら悪いけど持ってきて。
ウチ、深夜4時まで営業してるから。」


「あの・・ここのカフェもまだやってるんですか・・?」


「店長さんにすぐ連絡入れておくから。
今から行けば・・23時着ぐらいかな。」


「・・・・・・・・・・・。」


「“今の私はそんな事をしている場合じゃない”って言うんだったら・・

真っ直ぐに家へ帰ってもいいよ。」


「・・・・・・・・・。」


「でも・・こんな夜だから、まだ家に帰らずに“風”を感じるのもいいんじゃない?」