「あの・・・・・。」


「ユキ大丈夫か・・?
もう大丈夫だからね。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「ユキ・・?」


「・・・・・あの・・・・
“ユキ”って・・誰ですか・・?

あなたは・・誰ですか・・?」


「「「「!!!?」」」」


素朴な疑問を投げかけただけなのに、その場にいる人達が驚愕の表情を浮かべた。

私・・何か変な事・・言ったの・・?



「志村さん。少し起き上がれますか?」


看護師さんに手伝って貰って、
横になっていた体を起こして・・

私の目の前にお医者さんが座る。


号泣していた年配男性と女性はその後ろで、不安げな視線を私に向けてくる。




「志村さん。ご自分の名前が“志村ユキ”という自覚はありますか?」


「・・・・・・・いえ・・?」


「では、あなたのお名前を私に教えて頂けますか?」


「・・・・・・・・・・・・?」


「・・・・・・・・・。」


「あれ・・・私・・
・・自分の名前・・・・。」


「思い出せませんか?」


「・・・・・・はい。」


「では、お父さんとお母さんのお名前は分かりますか?」


「・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


「・・・分かりません・・。」


「・・分かりました。では最後に、今日が何月何日何曜日か分かりますか?」


「・・えっと・・・10月9日・・
“水曜日”・・だと思います・・。」


「志村さん、今日は10月12日の“土曜日”です。」


「・・・・はぁ・・。」