Happy Birthday!~私の宝物~

私はお母さんと花梨さんを押し退け、走り始める。私は、誰も通らないような道で立ち止まるとうずくまった。

数分間、ここでうずくまっていると、強い雨が降り始める。降り出した雨が、私の体を濡らしていった。

「……真弥、風邪引くよ?」

声が聞こえた瞬間、私に雨が当たらなくなる。顔を上げると、制服に身を包んだ愛音が私に傘を差し出して微笑んでいた。

「愛音……どうして?」

「今日、短縮授業で早めに終わったから遊びに来たの。電車で2駅の所だし……それで、どうしてこんな所にいるの?」

「……あのね――」

私は、愛音にさっきあったことを話す。愛音は、私のお母さんの行動に驚いているようだった。

「多分、それ……逃げて正解だったかも。たまたま真弥ん家の近く通って、見てみたら、近所の人や警察で凄いことになってたから……」

そう言って愛音は、私と同じ目線になるようにしゃがんだ。そして、私の頭を撫でる。無言だけど、良く頑張ったね、と言いたそうなのが分かった。

「……あ、通知来た」

愛音は、制服のポケットからスマホを取り出して目を通す。

「花梨さんから通知で、あんたのお母さん、自首したんだってさ。『私は、娘に暴言を吐いて差別をしてました』って……で、警察に連れてかれたらしい」

そう。私が初めて愛音にあった日から、私はお母さんから暴言を吐かれるようになった。

「もう人も居ないらしいし、花梨さんの家に行こ?私も一緒に行ってあげるから……」

愛音は立ち上がり、私に手を差し出す。私は、立ち上がって愛音の手を握り、愛音と一緒に花梨さんの家に向かった。