ー晴成sideー


響と通話を終えて溜め息をつく。


あいつが相手だと、どうにも上手く話せねぇ。

参ったな。

元々饒舌な方じゃねぇけど、響相手だと更に会話が続かねぇ。


今までは黙ってても女なんて寄ってきたから、相手を柔軟する方法なんて分かんねぇし。


「大きな溜め息をついて、どうしたんですか?」

ゆるりと口角を上げて俺を見る秋道。


この野郎、ぜってぇ分かって言ってるよな。

マジでうぜぇ。


「うっせぇ」

秋道から顔を逸らして、煙草に火をつけた。


「ゆっくり進むのでしょ?」

「・・・分かってる」

んなの言われなくても分かってる。

でも、響の学校にいる奴から入ってきた情報を聞いたら焦んだよ。


あいつに言い寄ってる男がいるってこと。

俺とは正反対のスポーツ少年らしいが・・・。


マジで、どうすりゃいいんだよ。

俺は告白もしてねえのに、相手の男は好きだと全面に打ち出してやがんだぞ。


「響さんが報告にあった彼に靡くとは思えませんよ」

「・・・・・」

「彼女は追い掛ければきっと逃げるでしょう。そこを踏まえて落ち着いた方がいいですよ」

秋道の言ってることは正論で。

そんなの分かってても、距離を縮めていかなきゃって焦んだよ。


「百戦錬磨の晴が、恋するとそんな風になるんだなぁ」

ニシシと楽しげに笑う瑠偉を目を細めて睨み付ける。


「シめるぞ」

「おっと、薮蛇。俺に当たんなよ」

ふざけたように両手を上げて降参ポーズを取った瑠偉。


「響ちゃん、またここに遊びに来てほしいなぁ」

いい子だし、と言ったのは光希。


「俺たちを普通に見てくれるしな」

豪の言う通り、響は俺たちを平等に見てくれる。

周囲をうろつく女どもみてぇに、色眼鏡で見たりバックグラウンドを見たりしねぇ。


「昨日のドライブは彼女も楽しんでくれてましたし、友達から始める方がいいでしょうね」

「・・・友達、かよ」

そんな月並みな所からなんて、道のり遠すぎだろ。


「そう、友達ですよ」

当然だって顔で秋道が言う。


他の誰とも違う、あいつだけの特別になりてぇ。


「今はまだ・・・友達でもねぇんだろうな」

ポツリと漏れた本音。


響にとったら、多分俺はまだ知り合い程度だろうと思うと、胸の奥がモヤモヤした。