「2人共大袈裟だよ」

フフフと笑ったら、

「お前が自分を軽んじ過ぎてんだよ」

と晴成に怒られた。


「別にネガティブキャンペーン中じゃないから」

「はぁ・・・もう意味わかんねぇ」

大きな溜め息をつかれたので、私も一緒に溜め息をついておいた。


私のことは私が考えるだけでいい。

今までだってそうしてきたんだ。

晴成や秋道が私の生き方に何を思ったとしても。




静かになった車内。

車は住宅街を抜けて、町外れの古びた建物へと向かっていた。

街灯のない周囲は暗闇に包まれている。

そんな中で一際明るく照明のついた場所に、何台ものバイクがひしめき合っているのが見えた。

建物の前に所狭しと並んだバイクと大勢の人がいるのその場所へと車は入っていく。


私はパーカーのフードを引っ張って、しっかりと目深にかぶり直す。

顔を晒す気は更々ない。



車が建物の前に到着すると、側にいた少年達が正面の大きなシャッターを引き開けた。

シャッターのすべてが上がりきると、車は建物の中へとゆっくりと進んでいった。


ここが、晴成達の言う溜まり場なのは間違いなさそうだ。


「シャッターが閉まりきったら降りるぞ」

晴成にそう言われて、

「そう」

と返す。

照明の灯る建物内は、外ほど人はいないらしい。

それでも、ポツリポツリと見える人影に本当に大丈夫なんだろうなと思った。


「建物内の人払いはしてありますので、響さんの存在が広がる事はありません」

私の心を知ってか知らずか、秋道がそう教えてくれた。

ここに来ることで、少なからず気を使わせてしまったらしい。


「ありがとうございます」

「いいえ。こちらの都合で来ていただいたので」

優しく微笑んだ秋道は、仕事のできる人なんだろうと思った。


「残ってるのは幹部と幹部に準じる者たちなので、知り得た情報を無駄に吹聴する者はいませんので、安心して降りてください」

「・・・うん」

私の為に色々してくれた事に申し訳ない気持ちになった。

晩御飯に釣られて軽い気持ちで来てしまった事を後悔する。




広い空間に車が収まると、後ろでシャッターが音を立てて閉まっていく。

外界と建物内が完全に遮断されると、晴成は動き出した。


「行くぞ」

後部座席のドアを開けて降りていく晴成は、私が出てくるのをドアを開けて待ってくれている。