響が居ると言う報告のあった交差点に差し掛かる。

バレてることを悟られねぇように、正面を見据えたまま前を通りすぎる。


隠れてる事がバレてるとは知らねぇ響が、必死で姿を隠してる所を想像して口元が緩みそうになった。


「今日の暴走は、この先を曲がって溜まり場に戻る手筈です。響さんを迎えに行きますか?」

タブレットでルート確認を終えた秋道が振り返る。

「ああ」

「では、夕飯は響さんの分も追加しておきましょう」

微笑んだ秋道に頷いた。


さて、どうやって溜まり場に連れてくかな。

あいつの事だから、面倒臭がって来ねぇのは目に見えてる。

学校でも人違いだったと押し通したらしいし。

ウルフとの繋がりをここまで知られたくない女もそういねぇのにな。


普通なら、自分が他の連中よりも俺達に近い存在だと自慢して優越感にひたるってのによ。

あいつはそうじゃねぇんだよなぁ。


まぁ、だからこそ、面白れぇって思うんだけどな。




チャラララ~着信を告げる秋道のスマホ。

「はい。どうかしましたか? えぇ・・・そうですか。では引き続き尾行をお願いします」

響に何かあったのか?

夜道の女の一人歩きはあぶねぇんだよ。


「何があった?」

自分でも思っていた以上に低い声が出たことに驚く。


「響さんが、路地を進み人気のない大橋の方へと向かってるそうです」

「・・・何やってんだ」

自然に眉根が寄る。


「どこかへ行くつもりでしょうか? 大橋の先にはコンビナートがあるだけなんですがね」

秋道も首を傾げた。


「向かえ」

低い声で運転手に告げた。

あのバカ、何を考えてんだよ。


早く捕まえねぇと、あの先に行けばバカをやってる奴等が溜まってやがる。

苛立ちを露に奥歯を噛み締めた。