「響、死ぬなんて止めろ」

真剣な表情で言われた。


「死ぬつもりは無かったけど?」

そんな勇気ないし。


「はぁ? お前、今飛び込もうとしてたろ?」

「川を見てただけよ」

身を乗り出したのは、ちょっとした気分。


「はぁ・・・マジかよ。無茶苦茶焦ったじゃねぇかよ」

晴成は、私を解放するとその場にしゃがみこんで両手で頭を押さえた。


「自殺すると思ってたの?」

「当たり前だろ! こんな人気のない所で橋の欄干に掴まって身を乗り出してりゃ誰でもそう思う」

「・・・バカだね。思い込みも甚だしい。私がそんなことするような奴じゃないって、ちょっと考えたら分かるよ」

呆れた顔でそう言った私に、

「・・・あ~そうだな、お前はそう言う奴だったわ」

大きく肩で息をついた晴成が立ち上がった。


「でも・・・ありがと。心配してくれたんだよね」

焦らせちゃったみたいだし、お礼は言っておこうかな。

「べ、別に大した事じゃねぇ」

照れたようにそっぽを向いた晴成の耳は少し赤かった気がする。

闇に包まれたここじゃ、はっきりとは分からなかったけど。


「それより、暴走中の総長さんがどうしてここに?」

さっき、車に乗って暴走してたよね。

晴成がこんな所に居る方のはおかしい。


「お前、さっき大通りにいただろうが」

「えっ?」

もしかして気付かれてた?

でも、こっちなんて見てなかったし、看板の影に隠れてたから見付かるはずないのに。


「偵察隊の連中が送ってきた写真にお前が写ってた」

「偵察隊?」

「ああ。暴走する時に俺達を見てるギャラリーの連中を見張ってる奴等が居るんだよ」

「へぇ、そんなの居るんだ」

「敵対してる奴等がギャラリーに紛れて攻撃を仕掛けてくるのを阻止するのにな。暴走中に何か仕掛けられたら、チームの連中が危険な目に遭うからな」

「へぇ・・・色々考えてるんだね」

「まぁな。これでもチームの連中の命を預かってるからな」

そう言った晴成の顔はどこか大人びて見えた。


「まぁ、暴走行為事態が危険だけどね」

矛盾した晴成の言葉があまりにもおかしくて思わず笑ったら、

「・・・っ、それ反則だろ」

と意味の分からない事を言われて目を逸らされた。


何が反則なんだろうか。

まったく意味がわかんない。