「ねぇ、ちょっと」

そんな声がかかったのは、下駄箱で靴を履き替えた後。

ゆっくりと振り返ると、そこには派手な化粧の3人組。

進学校なのに、うちの学校はこう言う所が緩いんだよなぁ。

上靴のラインを見て、3年生だと分かる。



「・・・何ですか」

面倒臭いと思いながらも問い掛ける。


「ウルフの皆さんとどういう関係?」

棘のあるその声に、

「別に」

と返した。


下駄箱にいた生徒が野次馬のようにこちらを見守ってる。

もちろん、助けてくれそうな人なんて1人も居ない。



「昨日、晴君の車に乗ったらしいじゃないのよ」

「人違いだったみたいで、直ぐに降ろされましたけど」

この人達には何の罪悪感もなく、さらりと嘘がつける。


「人違いだって」

「本当かしら」

「嘘の可能性もあるわよ」

ひそひそしてるつもりだろうけど、全て聞こえてきてるから。


あ~面倒な人達だな。

わざわざ帰る私を捕まえる為に、1年の下駄箱まで来るなんて、よっぽど暇人なんだろうな。

感情の籠らない瞳で、彼女達の動向を見据える。


「嘘ついたら承知しないから」

「そうよ」

「本当のこと言いなさいよ」

睨み付けられても怖くないけど、かなりウザい。


疑り深い人達に小さな息を漏らした。


「だったら、聞いてみてくださいよ。ウルフの人に」

聞けるもんならね。

多分、この人達は簡単に近付けないから、晴成達とは接触した私に嫉妬してるだけだ。


「き、聞けるわけ無いじゃない」

ヒステリックに叫んだ人に、

「じゃあ、私の言うことが嘘かどうか確かめようが無いですね」

と抑揚のない声で返した。


「・・・っ、1年の癖に生意気」

1年とか3年とか全く関係ないと思うけど。


「はぁ・・・」

「何なの、そのバカにした態度は!」

「それ思い込みですよね」

「ふざけてんの」

「ふざけてませんけど、用が済んだなら帰っていいですか」

相手するのも怠いんで。

ギャラリーも増えてきたし、悪目立ちし過ぎてる。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。話は終わってないわ」

私を掴もうと勢いよく手を伸ばした人をひらりと交わす。

簡単に捕まってあげるほど、お人好しじゃないんですよね。


私に交わされた人は、勢いを失わないまま前へとつんのめった。