メインが終わりデザートが出てきた所で、私は話を切り出した。


「帰りは近くの駅に送ってもらえるんだよね」

「駅とは言わず、自宅までお送りしますよ」

「そう」

まぁ、家は既に知られてるから別にいいや。


「食べたらもう帰んのかよ」

捨て犬みたいな目で見てくる晴成。


「帰るけど」

「この後、クラブに行かねぇか?」

「行くわけないよね。晴成と行ったりしたらさらに目立つでしょ」

「・・・だったら、俺んち来るか?」

「もっと行かないよね。2回しか会ってない人の家に行くとか有り得ないから」

「じゃあ、響の家に行く」

「来んな」

「あれもダメ、これもダメじゃねぇかよ」

逆ギレか・・・。


「はぁ・・・晴成、少しは落ち着いたらどうですか。響さんが困ってますよ。急に距離を縮められる訳がないですよ」

やれやれと首を左右に振った秋道。

「どうやっていいか、わかんねぇし」

「メル友ぐらいから始めたらどうですか?」

秋道の言葉に晴成は私を見た。

「電話番号、教えてくれるか?」と。

だから、捨て犬みたいな目をしない。

今の晴成を見て、怖いと恐れられてるウルフの総長だなんて思えないな。


「しつこかったら着拒するけど、それでいいなら」

多分、ここで教えないって言っても押し問答になりそうだから。

嫌なら出なきゃいいだけだし。


「よしっ」

急いで自分のスマホを取り出す晴成の後ろにパタパタ揺れる尻尾が見えるような気がした。


「狼じゃなくて、間違いなく犬に見える」

ポロッと漏らした私の本音を、

「こんな晴成は、俺も初めて見ますよ。犬種はラブラドールでしょうかね」

と秋道が拾って笑った。

晴成を見守る瞳が温かい気がして、秋道が晴成の事を思ってるんだと分かった。


「じゃあ、交換な」

アンバーな瞳が嬉しそうに私を見つめる。

「はいはい」

スマホを操作して情報を送った。


晴成って、最初の印象と違って面白いな。

女遊びするのは、あんまり誉められた事じゃないけど。


私にも抱える闇があるように、晴成にも何があるのかも知れないと思えた。