メインディッシュが運ばれてきても、まだ2人は何かを言い合っていて。

私は無視して、フォアグラの乗ったヒレステーキを食べていた。


「秋道は、どっちの味方なんだよ」

「正しい方の味方です」

「協力するって言ったじゃねぇかよ」

「言いましたが、晴成の今までの素行の悪さが災いしたんですよ」

「お前、参謀だろ」

「恋の参謀ではありませんよ」

お、上手い返しだね。

「・・・くっそ」

「今まで、俺は何度も言いましたよ。無駄な女遊びは止めるようにと」

「仕方ねぇだろ。食ってくれって近寄ってくりゃ溜まってたら出すだろ」

「節操がないから、本気になった時にこう言う事態になるんですよ」

言い合う2人はコントみたいで面白い。


ヒレ肉を咀嚼しながら、ぼんやりと見つめる。

これ、めちゃくちゃ柔らかくて美味しいんだけど。


一人前って幾らかなぁ。

支払いの時に聞かなきゃね。


「ねぇ、そのコントどれぐらい続くもの?」

ちょっと飽きてきたし、美味しいお肉は温かいうちに食べた方がいいと思うんだよね。


「なっ・・・」

あ、今、私の存在に気づいたよね、晴成。

顔色を悪くした晴成は、頭の中で今喋ってた内容を思い出してるわだろうなぁ。


「失礼しました。痴話喧嘩をお見せして」

「ああ、良いんだけど。このお肉美味しいよ。早く食べなよ」

フォークに突き刺した肉を見せた。


「そ、そうですね」

苦笑いした秋道は、目の前に置かれた皿の料理を食べ始めた。


「今の・・・全部聞いたのか」

「まぁ、この距離じゃ聞きたくなくても聞こえるよね」

「・・・最悪だ。俺の印象悪くなる」

頭を抱えた晴成に、

「元々そんなに良くないから大丈夫だよ」

と励ますように声をかけたのに、落ち込まれた。



「晴成、頑張るしか無いですよ。マイナスからのスタートです」

何かを悟った様に言う秋道に、

「・・ああ」

力なく返事した晴成も、ヒレステーキを食べ始めた。