「響って、一人暮らしだよな?」

晴成にそう聞かれて、

「あ、うん。そうだけど」

と頷いた。


「護衛や運転手を付けるぐらいだから、じいさんは相当な金持ちか地位にいる人ってことか」

顎に手を当てた晴成は推理を始める。

「さぁ、どうかな」

聞いてないから知らないわよ、そんなの。


「はぁ? 知らねぇってどういう事だよ」

「どもこうもないよ。興味ないから聞いてないだけ」

「興味ないって・・・」

呆れた顔で言われた。


「興味ないものはないのよ」

深く入り込むのは怖い。

何も知らなければ、きっと傷付く事もないから。

話はこれ以上終わりだと視線を逸らした。


私の中にこれ以上、踏み込まないで欲しい。


「悪りぃ、色々聞かれて気分悪いよな。さぁ、飯食おうぜ」

晴成も空気は読めるらしい。

今の私に、それはありがたい事だった。


「それより、明日からの話なんですが」

話題を変えて秋道が話し出す。

「間違いで、途中で下ろされたって言うよ」

簡単なことだ。


「そんなの一時しのぎにしかなんねぇぞ」

「一時しのぎでも、放っておけばそのうちみんな忘れるわよ」

「無理だな。俺はこれからも響と一緒に居てぇし」

「・・・・・」

晴成は、何を血迷ったことを言ってるんだろうな。


「響さん、諦めてくださいね。晴成は本気ですよ」

「はぁ? 私じゃなくて他の子と遊べばいいでしょ」

ウルフの流れてる噂じゃ、総長は女遊びが激しいって噂だし。

私じゃなくていいよね。


「他の女なんて、もう要らねぇよ」

かっこよく言ってるけど、信憑性無いんだよね。


「ウルフの総長さんは女を選び放題だって噂よね?」

「・・・・・」

「だったら、そこから選んだらいいんじゃない? 好きじゃなくても、そう言う行為は出来るらしいし」

流れてる噂を信じて話をしたのは申し訳ないと思うけど、あながち全部が噂って訳でも無さそうだしね。


「・・・・・」

ほら、黙り込んだのは、当たってるって事だよね。


「晴成、自業自得ですね」

突き放すように冷たく言い放った秋道に、

「もうやらねぇし」

と不服そうに抗議した晴成。


「それを俺に言っても意味ないですね」

こう言うところ、秋道はシビアなんだね。


まぁ、どうでもいいけど。

早く食べて帰りたい。

次の料理、早く運ばれて来ないかなぁ。