黒塗りの車で連れてこられたのは、かなり高級そうなフランス料理店。


いやいや、学生服で来ていいのか?

そわそわしてしまう。


店長らしき人に案内されて個室に連れてこられたのはいいけれど、居心地悪くて仕方ない。

進められるがままに四角いテーブルに座ったけれど、対面に晴成と秋道が座ってこちらを見てる。


うわぁ・・・最悪。

なんなの、この目の前の美丈夫2人。


普通の女の子なら目をハートにしてドキドキしてるところだろうな。

私、別になんとも思ってないけど。

面倒臭いとしか言いようがない。


「改めて佐々木秋道です。秋道と呼んでいただいて結構です」

「・・・はぁ」

曖昧な笑みを返す。

心の中で既に呼び捨ててたけどな!


「俺は晴成な、赤谷晴成。覚えてたと思うけど」

さも当たり前のように言うのでムカついて、

「ん。しっかり忘れてたけどね」

と返してやる。


「はぁ・・・おまっ・・・マジかよ」

項垂れた晴成を見てしてやったり、と思った。

「ククク・・・忘れられてたんですね」

ニヤリと口角を上げて楽しそうに晴成を見る秋道。

秋道はどう考えても、腹黒なんだろうなぁ。


「もう、ぜってぇ忘れんなよ!」

叫ばなくてもいいけどね。

「そうね・・・多分忘れないわ」

こんな迷惑かけられちゃね。

明日には、学校中に広まってるのよ。

黒塗りのイケメンに拐われたって。


本当、邪魔くさい。


「多分て、なんだよ」

と突っ込んできた晴成は、

「落ち着いたらどうですか?」

秋道に諫められる。


「・・・チッ」

不貞腐れてもイケメンはイケメンなんだなぁ。


「あの日、晴成を助けてもらって助かりました」

「はぁ」

「頭が取られたらうちのチームに大打撃でした」

「・・・チーム?」

秋道の言葉に冷や汗が出る。


チームって何?

サッカーチームとか野球チームとかじゃないことは、この人達の風貌から見て分かる。


ますます面倒なことになってきたよ。

巻き込まれたくないのに、巻き込まれてるかんが否めない。


「あ、知りませんか? ウルフっていう暴走族なんですけど」

さっさりときっぱり言い切った秋道に、ダメなやつだ項垂れた。


勘弁してよ。

あの噂のウルフだなんて。

まぁ、噂しか知らないんだけど、面倒臭いってことは間違いないよ。