「あいつ、本当、面倒くさい。断ったのに、私が睨まれるのおかしいでしょ」

眉を寄せてうざったいと周囲に視線を向けた。

今度は、視線を逸らす女と睨み返してくる女の二種類がいた。


「及川君、イケメンで優しいって人気あるんだよ。それに、一年なのにサッカー部でレギュラーなんだって」

「千里、詳しいんだね」

「クラスの女子がよく話してるよ」

「へぇ、そうなんだ」

「響ちゃんは、我関せずだものね。クラスメートの話なんて聞いてないか」

呆れた様に肩を竦めた千里。

何となく、千里の言葉に違和感を感じて、なんだろうか? と考える。


「・・・・・」

「どうかしたの? 響ちゃん」

急に黙り込んだ私の顔を心配そうに覗く千里に、

「あ! 分かった」

と声を上げた。


「えっ? ど、どうしたの」

真面目な顔で焦ってる千里が面白い。


「千里の話し方に違和感を感じてさ。考えたら分かったんだよ」

「え、どう言うこと?」

頭に? が浮かんでるであろう千里。


「千里って私のことちゃん付けて呼んでるじゃん?」

「だって、最初から響ちゃんて呼んでるじゃない」

「ほら、それ。すっごく違和感。響でいいよ、私達友達でしょ」

クスクス笑ってそう言えば、千里は破顔して嬉しそうに頷いた。


「うん、分かった。ひ、響」

「そんな緊張しなくても」

クククと喉を鳴らして笑う。


「す、直ぐに慣れるわよ」

「ん、じゃまぁ、よろしく」

ポンポンと千里の肩を叩いた。


「任せて」

胸を張った千里は、優等生らしく笑う。


「明日から、あいつを巻くの手伝ってよね」

「及川君?」

「そう。あんなに言ってもへこたれない奴なんて初めてなんだけど」

困惑したように眉を寄せる。


素っ気なく返せば、ほとんどの男が高飛車で嫌な女だって諦めてくれるのに、彼のしつこさはいったいなんなのよ。


「フフフ、及川君めげなかったね。響にあれだけ言われて引かないなんてある意味強者」

「お陰で悪目立ちしたし」

やってらんない、と溜め息を吐く。


「交わすのは手伝うけど。及川君、粘り強そう」

「そんなの嬉しくない」

苛々させられるだけじゃん。


爽やか青年は、スポーツ少女と戯れてて欲しい。

適材適所と言う言葉を是非とも覚えてもらいたいものだ。