俺を乗せた車がクラブ前に到着すると、周囲にいた連中がわらわらと集まってくる。

キャアキャアと騒がしい女達の声に耳障りだと眉を寄せながら、運転手の開けてくれたドアから外へ出た。


「晴さま」

「こっち向いて」

「晴成君」

黄色い声が飛ぶ。

我先にと手を振りアピールする姿が滑稽に見えた。


通り道を作るように、チームのメンバーが俺の周囲に集まってくる。

近付きたくても近付けない女達が、残念そうに眉を寄せる姿を見ても何も感じることはない。


「行きましょうか、晴成」

助手席から降りた秋道が俺の隣に並ぶ。


「ああ」

ポケットに片手を突っ込んだまま気だるい体を引きずるようにして歩き出す。


きらびやかなネオンが灯るクラブの正面玄関。

観音開きのそれを両側で押し開けて待っているのはチームの連中。


俺達は足早にそこを目指す。


騒がしい周囲に目を向けることもなく、進む俺達に惜しみ無く掛かるのは女の誘う声。

あからさまなそれに、特に反応はしない。


選ぶのはいつでも出来るが、こんな風に恥じらいもなく誘ってくる女は、相手にすると後々面倒になるしな。


遊ぶなら後腐れなく、相手も遊びだと割り切れる奴じゃねぇと。

彼女の座が欲しいだの、ウルフの姫の座が欲しいだの思ってるような女には用はねぇ。

欲を吐き出すだけの相手に、相応しいのは遊びなれてる女。

一時の快楽に愛なんてものは要らねぇからな。




クラブのドアをくぐり店内へと入る。

薄暗いそこには大音量の音楽と、色とりどりの照明が充満していた。


蒸せ返るような熱気に包まれたそこを、奥へと進む。


俺の登場に陽気に踊っていた連中が色めき立つ。

男も女も、キラキラした瞳を向けてきやがる。


面倒癖ぇ。

今日は自棄に周囲の視線にイラついた。


毛足の高い絨毯を踏み締めながら目指したのは、俺達の指定席。

店内の置くに設えたそこには、L字型の白いソファーとテーブルが置かれてる。

誰も近づかないそこに、俺はどかりと腰を下ろす。

少し離れて座った秋道が、近くにいたボーイを手を上げて呼んだ。


「晴成、飲み物は何にしますか?」

「きつい酒なら何でもいい」

今日は強い酒を飲みたい気分だ。

飲んで、この胸の奥のモヤモヤが消えるなら・・・それでいい。