「では、彼女について少し調べましょうか?」

「いや、いい」

首を左右に振る。

あいつは、そう言うの嫌がりそうだからな。


「そうですか。では、何かあれば言ってください。協力はしますよ」

そう言って手元の手帳を閉じると立ち上がり、ドアの側まで歩いていった秋道。


「ああ。その時はまた頼む」

素直に頷いて立ち上がると、秋道が開けて待っていてくれるドアへと向かった。







一回に行くと、広間では既にパーティーの準備は終わっていて、沢山のメンバーが俺の登場を待っていた。

祝賀パーティーは、抗争の労を労うために開かれる。

チームの為に頑張ってくれた奴らに感謝を形にしたようなものだ。



既に定位置の席に付いてる幹部3人の姿が見える。

俺と秋道が、用意された席に向かうと、広間は大きくざわめいた。



「早く始めようぜ」

既にビールを飲み始めていた瑠偉がグラスを掲げて言う。

「ああ、分かった」

俺はテーブルに用意されたグラスを手に持って、広間に集まったメンバーを見渡した。

それぞれが大小様々な怪我をしているが、一様に笑顔なのは、積年の恨みを晴らせたからじゃねぇかと思う。


夜叉とはウルフ発足以来、因縁の対決をしていて、長らく小競り合いをしていたからな。

今まで、大規模は抗争に持ち込まなかったのは面倒癖ぇのと、俺自身のやる気が起こらなかっただけのこと。


響に助けられたあの日も、夜叉の連中との小競り合いが激化し、俺は1人の所を狙われた。

総長を狙ってくるぐらい、夜叉は天下取りに焦っていたのかも知れねぇな。

元々あった夜叉を抜いて、トップに立った俺たちウルフがあいつらは相当気に入らなかったようだし。


夜叉を一気に潰したいと言う欲求がうちの下からも、かなり上がっていたし、今回はいい機会だったのかもな。


「今日はご苦労。これで、夜叉も二度と立ち上がれねぇだろう。祝いの酒だ、存分に楽しめ」

そう叫べば、

「「「「「おぉー!」」」」

と会場一杯に野太い声が響き渡った。

グラスを掲げたメンバーの顔は晴れやかだ。


高揚した気分のまま始まったパーティーは、明け方まで続くだろう。

俺はソファーに座ると、持っていたグラスの中身を一気に煽った。



ーendー