両親と違って、私に無償の愛情を向けてくれるお祖父ちゃんは、私にとって大切な存在だ。

お祖父ちゃんが居てくれたから、今ここにいると言っても良いぐらいに。


母親とは特殊な理由で離別したお祖父ちゃんだけど、決して情のない人じゃない。

だって、私に相当な愛情を注いでくれてるもん。


別れた妻が亡くなった後に、私の母親とも何度か接触を試みた様だけど、受け入れなかったとお祖父ちゃんは言ってた。

彼女には彼女なりの理由があるだろうから、そこを責めるつもりはないけど。

私に接するお祖父ちゃんを見て、母親は随分と損をした様な気がする。

優しく情深いお祖父ちゃんを知る事が出来なかった母親は、家族に愛情を向ける術を学べなかったんだろう。


その結果が、家族の解散に繋がったのかも知れない。

まぁ、解散させたのは、私だけどね。


フフフと自嘲的な笑みが口元に浮かんだ。





「帰ろう、響」

ホームルームが終わって、鞄を持った千里がやって来る。

「ん」

鞄を持って立ち上がる。


「今日もバイト?」

「そっ」

父親からの生活費の振り込みもあるし、お祖父ちゃんがお小遣いをくれるんだけど、お金は貯めておきたい。

いつかは、一人で生きていかなきゃなるもの。


「じゃあ、途中まで」

「ん」

そんな会話をしながら廊下に出た。


帰宅する生徒で賑わうそこを千里と並んで進む。

いくつかの男女のグループが出来ていて、何やら楽しそうに会話していた。

漏れ聞こえるのは、彼氏の事や遊びの事で。


これを青春と言うんだろうと、他人事のように思っていた。


「ねぇねぇ今週末のウルフの集会に行くの?」

「おう、行く行く」

「今回のは大きい集会なんだよね」

「ああ。敵対してた夜叉をやっとぶっ潰して、長い抗争が終わったからな」

「すご~い」

「まぁ、俺は下っぱだから、大して役に立ってねぇけど。総長達が頑張ったんだぜ」

そんな会話をしてたのは、派手な格好をしたグループ。

ヤンキーとギャルって、感じの。


時々耳に入るウルフって名前。

この辺を仕切る暴走族だって言うのは、最近知った。


興味なんてないから、それ以上の事は知らないけどね。



「物騒な話してるわね」

千里とは眉間にシワを寄せる。

真面目な千里にしてみれば、暴走族はイレギュラーなんだろうな。