女のくれたタオルは俺の浴びた返り血で鈍い赤に染まっていく。

「こんなに返り血を浴びてたのかよ」

と顔を歪めた俺に女は言う。

「今更なに言ってるの? 貴方の着てる白いスカジャン赤く染まってるわよ」

「はぁ? マジか」

女の言葉に慌ててスカジャンを脱ぐと、無惨な色に染まってた。

これ、結構気に入ってたんだけどな。


「それ、先に水洗いだけでもしておいた方が良いわよ。血は落ちにくいし」

他人事の様にそう言うと女はキッチンへと消えていく。

まぁ、女にとっては他人事に間違いねぇけど。

いつも俺も周りに群がる女なら、喜んで我先にと世話をやきたがるのに。

俺に興味を示さない目の前の女が面白いと思えた。


「・・・ああ、分かった」

そう返してスカジャンを畳んだ。


少しして戻ってきた女の手には二つのマグカップ。


「どうぞ。温かいお茶よ」

「ああ、サンキュ」

受け取ったそれは温かくて、一口飲むの冷えきった体を中から温めてくれた。


「それ食べたら、お友達か誰かに連絡して迎え来てもらって」

女はそう言いながら、ソファーに座る。


「分かった」

本当、俺に興味なさそうだよな。


静かな静寂が流れる。

何も聞いてこない女が不思議でしかたなかった。

血濡れで変な奴らに追いかけられていた奴を見たらどうしたのか? と聞いてもおかしくないはずなのに、女は何も聞こうとしない。


「何も聞かねぇんだな?」

痺れを切らして聞いてみる。

「うん。余計な事を聞いて巻き込まれたくないもの」

サラッと返答する女。


「ククク・・・正直過ぎるだろ?」

「自分が可愛いもの」

「面白れぇ女」

思わず笑みが漏れた。


「どうでも良い。あ、湿布取ってくる」

湿布を思い出したらしい女は、部屋の隅に置いてあるチェストへと向かう。


チェストの上に置かれてた小箱から湿布らしい物を取り出すと、それを持って戻ってきた。



「冷湿布、足首に貼ったら」

「サンキュ」

マグカップをテーブルに置いて、それを受け取るとスラックスの裾を捲って、靴下を脱ぐ。

そして、熱を持つ足首へとそれを張り付けた。