「とにかく、多分周囲は騒がしくなると思う」

「そうね。それでなくても響は目立ってるのにね」

「えっ? 目立ってたの」

おかしいな、静かに生活してたのに。

まぁ、及川君が絡んで来るようになってからは、嫌がおうにも目立ってた気もしないでもない。


「気づいてなかったの。まぁ響らしいけど」

やれやれと溜め息をつかれたが、知らないよ、そんなの。


「千里に迷惑掛かるようなら、私から離れてくれていいからね」

悪意が千里に飛び火するのは困る。


「何言ってんの。そんな事ぐらいで友達止めないよ」

「言うと思った」

フフフと笑う。

嬉しくもあり、戸惑いもあり。


「当たり前でしょ。ウルフが出てくる前から私達は友達なんだからね」

「ん」

「彼らのせいで、私達が友達じゃなくなるなんておかしいよ」

怒ってる千里は、ウルフに乗り込む勢いだと思う。


「ありがと」

だからね、凄く言いたくなった。


「ば、バカ。お礼なんていらないよ」

照れ臭そうにお弁当を慌てて食べる千里。

クラス委員で面倒見のいい千里は、ちょっと照れ屋さんだ。


「ウルフに入ったからって何かが大きく変わることなんてないし、これからもよろしく」

「もちろん。ところで、仲間って姫とかじゃないの?」

「私がそんな柄じゃないの知ってるよね」

ちやほやと持ち上げられて、守られるだけの存在なんてごめんだ。


「響は嫌がるよね、姫なんて」

「当たり前。仲間になるなら兵隊としてじゃないと嫌って言った」

「兵隊・・・って。本当に気を付けてよ。女の子なんだから顔に怪我なんてしたら大変」

千里は母親みたいだ。

うちの母親はこんなじゃなかったけど。


「大丈夫。そんな頻繁に溜まり場に行ったりしないし。晴成達だっていつも喧嘩してる訳じゃないよ」

「響の自信に満ちた大丈夫が心配」

千里はかなり心配性だよね。


「大丈夫大丈夫」

ポンポンと慰めるように肩を叩いたら、

「軽すぎる」

と再び大きな溜め息をくれた。


何かが起こる前から心配してもダメだしね。

なるようにしかならないんだよ、世の中って。


ほら、ケセラセラ~ってね。