「瑠偉達も、晴成の気持ちは分かっています。だからこそ、彼女を無条件に受け入れるんです」

「ああ」

「響さんが背負ってる闇はきっと深い。晴成はそれを溶かしてあげられる存在になってください」

秋道の言葉に顔を上げた。


「お前も気づいてたのか?」

「ええ。響さんが時おり見せる何も映していない瞳が気になっていたんです」

「響の中には大きな虚無が存在すんだろうな」

「自分の存在意義を彼女はきっと探しています」

「俺は・・・あいつの存在意義になりてぇと思ってる」

「それはこれからの晴成の努力しだいですね」

他人事の様にさらりと言った秋道はクスクスと笑った。


「・・・他人事だと思いやがって」

「ええ。高見の見物でもさせてもらいますよ」

策士の顔つきて秋道は言う。


「・・・チッ」

腹立たしさの中に沸き起こったのは闘志。

ぜってぇ響を手に入れてやる。


この時の俺は予感していた。

響がきっと、俺にとっての最後の女になることを。

そして、先の未来、俺の側であいつが笑っていてくれることも。








「響さん、少しいいですか?」

秋道が響の側へと歩いていく。

「なんですか?」

ラグに座ったままで秋道を見上げる仕草がたまらなく可愛かった。


く、くそっ・・・。


「2人の人間と顔合わせをしてもらいたいのですが」

「顔合わせ?」

何のことだ? と首を傾げる響。


「響さんの学校にうちのメンバーが数人いるので、彼らに響さんの護衛を任せようと思います」

「ん・・・そんなの要らないけど。自分の事は自分で守れるし」

一瞬考えるような仕草をして首を左右に振った響。


「それは分かっていますが。念の為です。妬みに固執した女性は徒党を組むと厄介なので。その警戒の為にです」

「あ・・・まぁ、女の妬みが面倒なのは間違いないよね」

眉間にシワを寄せた響は溜め息を一つつく。


「そうです。なので信頼のおける2人に響さんの周囲を警戒をさせます」

「そ・・・分かった」

しぶしぶ頷いた響。 

思う所があるんだろうが、我慢してもらうしかねぇな。


「では、のちほどこちらに呼びます」

「了解。それよりさ。私、ここに居る時は今までと変わらずにパーカーのフード被ってるけど、それでいいよね」

「ええ、構いませんよ。護衛の2人に顔見せしてもらえば後は問題ないです」

秋道の返答に満足そうに口を緩めた響。