私は相手と自分の力量を分析してからじゃ、戦えない。

圧倒的に私の方が不利ならば、あんな無茶はしない。




「夜叉の処理はこちらに任せてもらってもいいですか?」

「もちろんですよ」

逆に私に任されても困る。

あの場を収められたら、もう用ない。


「分かりました。でも、本当に今回は助かりました」

改めて秋道にお礼を言われる。


「・・・そんな大袈裟なものじゃないですよ」

私の体が反応しただけもん。

でも、あんな場面で血が騒ぐのは、やっぱり闘争心がまだ残ってるからだろうなぁ。

敵を前にして、ワクワクしたもんね。


自分が普通の女の子じゃないのを、改めて悟った気がする。


「響の腕っぷしの強さも気の強さも、ますます俺の隣に相応しいな」

晴成が1人で納得してるけど、そっとしておくことにした。


「でもよ。今回の事で響ちゃん、狙われちまわね?」

余計なことに気付かないでよ、瑠偉。


「そうだよなぁ。やっぱり、これからは僕らと行動して欲しいな」

さらりと願望を口にした光希は、目をキラキラさせて期待したように私を見る。


ちょっと、勝手なことばっかり言わないでよ。


「心配しなくても、フードで顔バレしてない」

顔バレしてなきゃ問題ないでしょ。

誰だか分かんないんだから。


「でも、名前はバレたな」

豪の言葉に憤慨する。


誰だ、あの場で私の名前を呼んだ奴。

前に出てこい。


「響って名前と女って事は、今夜中にも広がる」

「最悪だ」

晴成の言葉に、溜め息を漏らした。


でも、それだけじゃ、私って特定しにくいよね。

そうだよ。

1人で納得してた私に、秋道の驚くべき予想が披露される。


「もしかしたら・・・ですが。響さんの学校の生徒の中には前の噂と照らし合わせて、あなたの正体に気付く人間がいるかもしれません」

「そ、そんなぁ」

困るよ、それは。


ウルフの総長車に乗ったことは、うちの学校の連中が知る所。

それと今回の噂が合致すれば、正体バレるじゃない。

勘弁してよ。


後先を考えずに飛び出した自分に怒りがわく。

余計なことにしなきゃ良かったよ。