よし、解決。

落ちてたナイフと拳銃を拾って振り返る。

するとそこには、目を丸めたまま固まる晴成と、その向こうのCLUBの店先に集まる秋道達が驚きの表情で止まってた。


「これ、どうする?」

両手に持ったそれを掲げて見せると、晴成達が我に返った様に動き出す。


「響、急に飛び出すなよ」

晴成は、慌てて私の前までやって来る。


「バカね。奇襲攻撃は突然だから効果的なのよ」

呆れた顔をしたら、

「マジで心配した」

と抱き締められた。


ちょ、ちょっとこんな人の多い所でなにしてんのよ。

焦りと恥ずかしさにあわてふためく。

そして、悔しいけどドキドキした。



「夜叉の連中を拘束してください」

秋道がてきぱきと指示を出せば、秋道と一緒にやって来たらしい男の子達が動き出す。

音を無くしていた周囲がにわかに活気付き、口々に何かを話し始めた。


「あいつ、すげぇな」

「声からして女だよな」

「どうして、あんなに強いんだよ」

ヒソヒソ話せ! すっごい聞こえてるっての。


「かっこよかったよね」

「もしかして、男の娘だったりして」

「あんなに強いならそれでもいい」

いやいや、何勝手なこと言ってんの。

正真正銘女だし。


晴成に抱き締められながら、周囲の話し声を聞いていた。

それより、この状況かなり不味い。

どうする? 


今ごろ焦ってきた私は、秋道のこんな声で助けられる。

「晴成、ここは人が多すぎます。一先ず溜まり場に移動しますよ」

ありがとう、秋道。

それがいいよね。


「分かった。CLUBはまた今度だ、響」

「ん」

もちろん、こんな状況になったら異論はない。


晴成は私が頷いたのを見て腕の中から解放すると、停めたままのバイクに跨がった。

「ヘルメットを寄越せ」

未だに固まってた黒服達に言う。

そう言えば、この人たち私達のヘルメットを抱き締めたままだったね。


「は、はい。直ぐに」

慌てて近寄るとヘルメットを手渡してくれた。

晴成ももう1人からヘルメットを受け取って被ってる。


私もフードがずれないように再び被るとバイザーをしっかりと下ろし、タンデムに飛び乗った。

晴成がエンジンキーを回せば、低い音が響き渡る。


来たときと同じようにしっかりと晴成にしがみつく。

ゆっくりとスタートしたバイクは、瞬く間にスピードを上げ街を駆け抜けた。