それから。

 美奈はアレの時は小太郎をリビングに連れて行きゲージに入れるようにした。


 特別なチャンスではないけど、引っ越ししてからずっとできないままだった為、久しぶりにできると謙は思っていた。




 寝室の電気を消して。


 唇を重ねる謙と美奈。


 パジャマを脱がせて行き。


 肌と肌が重なり、お互いの体温が触れ合う…。



 よし! 今日は邪魔されないぞ!

 謙はそう思った。


 が…


 カリカリカリ…カリカリカリ…


 寝室のドアを何かが当たっているような変な音がした。


 無視して続ける謙。

 だが…。


 カリカリカリ…

「く~ん」

 
 え? 

 まさか!


 謙は動きが止まってしまった。



「く~ん…く~ん。…ワン、ワン! 」


 小太郎だ! 


「え? 小太郎? ゲージでちゃったの? 」

 美奈はパジャマの上を着て、寝室のドアを開けた。


 するとドアの向こうで小太郎がしっぽを振っている。


「小太郎、ゲージ出ちゃったのね」

 美奈は小太郎を抱き上げた。

 ペロペロと小太郎は美奈を舐めている。



「おい…いい加減にしろよ…」


 怒りが湧いてきた謙。

 犬と俺とどっちが大切なんだ!


 怒りが収まらず、謙はその夜はソファーで寝た。





 翌朝。

 朝ご飯を食べながら、謙はいつもより不機嫌な顔をしていた。


 あまり喋る事がなく、謙はそのまま仕事に行った。






 仕をしていても謙は怒りが湧いたままだった。


 このままの生活が続くのだろうか? 


 リビングに置いても駄目なら、どこかに預けるか? 

 それを美奈が許すだろうか? 



 そんな事を考えながら仕事をして謙は一日を終えた。