『遊園地に行こう!』

そう言いだしたのは、父だった。母はピアノがどうとか言っていたが、最終的には風香を連れて遊園地に一緒に行ってくれた。

しかし、パレードを見る前に母が『帰るよ。あんたはピアノを練習しなきゃいけないんだから!』と怒鳴り、家へと帰ったのだ。

「いけない!」

風香は小さく呟き、それ以上思い出すなと腕をこっそりつねる。腕に走った痛みによって、昔の記憶は徐々に蓋がされていった。

光り輝く華やかなパレードを、風香は最後の方は複雑な思いで見つめていた。



楽しい日曜日も終わり、また学校が始まる。風香は制服に着替え、かばんを手にした。

「風香、今日の放課後はこころの家にちょっと行ってほしいんだけど、大丈夫?」

父が風香に訊ね、風香はどうしてだろうと思いながらも「大丈夫だよ」と言う。理子たちが撮った昨日の写真を見せてもらいたいと思っていたので、いいタイミングだったのだが。

家を出てしばらく歩くと、またいつものように「風香、おはよ〜」と友達から声をかけられる。風香はまたいつものように笑った。