みんなの話を聞く限り、たぶん恋はドキドキするものだよね?

キュンキュンするって言う人もいるけど、心臓ってそんな音が鳴るの?

壊れないの·····?

ふ、不安·····。

「あ、次なんだっけ?」

「数学〜。超嬉しい!」

「イケメン補給できる〜ラッキー!」

あ·····次数学か·····。

私の苦手な教科。

それに私が馬鹿なせいでよく名前さされちゃうし·····。

泣きそうになっていると、廊下の方からキャーって声が聞こえてきて、身構える。

「来たよ、遊佐〈ユサ〉ちゃん!」

「まじ今日もイケメン·····」

うっとりする2人の横で、私は真面目スイッチをONに切り替えた。

“遊佐ちゃん”とは数学の先生の愛称で、本名は矢高遊佐〈ヤタカユサ〉先生。

実はあの綺咲ちゃんのお兄さんだとか。

兄妹そろって美形でモテモテ·····。

私には縁遠い世界だな·····。

「はいお前ら。もう次の授業始まるから、早く自分の教室戻れ」

「えー。せっかく遊佐ちゃん来たのにぃ」

「俺はここに授業しに来たの。ほらしっしっ」

「ひどーい。今度デートしよ〜!」

女の子ってすごい·····。